2007年6月16日土曜日

vol.32 NTTの正体 2000/10/25

そんなことじゃないかな、と思っていたら案の定。

公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いでNTT東日本の調査を開始した。確かとっくにDSLは各社が率先して導入を表明、NTT自身も実験的に導入している筈である。ところが、契約者数は何と現在たったの2000件。6月末の加入者数はアメリカで140万人、韓国でも112万人というのだからお話にならない数字である。

わたしも期待して待っていたのだが、切り替えの案内すらこない。理由を聞いて、なるほどね。NTTはどうあっても光ファイバーに固執していたわけである。

さらに、NTT内に設置するDSL装置の設置に500万円だとか、空き回線の調査に半年だとか言って、新規参入業者に対して嫌がらせをしていたというのだから呆れてしまう。

まー、NTTとしてもそれなりの焦りはあったことがこれではっきりしたわけだが、DSLは今やISDNに代わる期待の星である。光ファイバーが家庭までの引き込みにあと数兆円の投資を必要とするのに対し、既存回線を使用するDSLは初期投資が殆どかからない。

ただし、現在サーバーまでの専用線は64Kbpsなので、その10倍の640Kbpsの伝送速度があるからといって、それがそのまま反映されるわけではない。しかし、現状のISDNの実効伝送速度は10Kbps程度のものであることはご存じの通りで、もし仮にDSLによって64Kbpsの伝送速度を確保できるならば、それでも現状では十分に満足のいくパフォーマンスを持っているのである。

NTT東日本の考え方というのは、とりあえずISDNの「はじめくん」で辛抱せよ、今、世界一のパフォーマンスを持つ「おわりくん」を開発中だから、追って沙汰するまで待て、というものである。

NTTの宮津社長は、これまで東西NTTの再統合やNTT法改正を訴えていたが、今回の事件に対して、「今年の7月からはちゃんと対応している」と言っているが、これは裏を返せば、「それまでは邪魔してました」と言っているようなもので、命取りになりかねない発言なのだが、分かっているのだろうか。
あおりを食らって、NTTコム、NTTドコモは実質子会社からの脱皮を強制されることになるようだが、こっちの方は願ってもないことだろう。

NTTは「線貸し屋」に徹底させることである。この際、公正取引委員会には頑張ってもらってNTT東日本を素っ裸にして貰いたいものである。

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2007年6月13日水曜日

vol.31 ITからICへ 2000/10/24

またか、という事件が起きた。
今度は三洋電機である。太陽光発電装置の一部に出力不足の製品があることを、利用者団体が2年前にファックスで指摘。これに対し社長は担当取締役に調査を指示したが、「製品不良の事実はない」とする報告を受け、詳しい調査を今日までせずに放置したというもの。

構造的には、三菱自動車のリコール隠しと同様の構造である。2年前といえばあの「東芝事件」が起こった年であり、消費者に対する企業のクレーム対応のあり方が問われ始めた年である。
しかし、各企業がこの事件から学んだことは少なかったのだろう。これを他山の石として危機管理マニュアルを策定したという話は聞いたことがない。

日本の企業は図体だけでかくなっただけで、その体質は中小企業と変わるところはない。そのことは、そごう、雪印乳業、三菱自動車などの事件でも明らかな通りである。
それにしても、どうしてこうも同じ轍を踏んでしまうのか?

これについては、幾度も指摘している通り、「日本人の情報開示よりも隠ぺいを好む特質」にあるのではないかと思う。自分の利益のために、何ものかが、ウソ情報によって、一時的に隠ぺいしていた事実が、白日のもとに曝される。これによって、結果的には絶大なる不利益を被るだけでなく、社会的制裁を受けることになるという図式であるが、何のことはない、これは水戸黄門の悪代官そのままの図式ではないか。

つまるところ、我々日本人は江戸時代という封建時代の価値観のまま21世紀を迎えようとしているわけである。政府までもが音頭をとってIT革命を推進しようという時代だが、いくらインフラが整ったところで情報を発する我々の頭が江戸時代では、瓦版以上の情報が流れることはないだろう。

せっかくのコミュニケーションツールを使いこなせず、無意味な情報が垂れ流されるだけで、肝心な情報は隠ぺいされたままというのがどうやら我が国の企業情報ディスクロージャーの現状のようである。
ITというハードには、IC(Information Control)が欠かせない。テクノロジーは、あくまでもコントロールされた情報を流すための技術にすぎない。情報管理は今後、戦争におけるシビリアンコントロールと同程度の重要性を持ったものになってくるだろう。

消費者とのコミュニケーションをコントロールすること、それはあたかも情報戦の様相を呈してこよう。そのような現状をかんがみれば、企業に入ってくる情報の窓口にマニュアルトークしか出来ない若い女性を置いたり、企業生命を左右するような、最も重要な意思決定を促すための人材や組織が皆無だったりというようなことは、武装した相手に対して素手で立ち向かうようなものだということがお分かりいただけるだろう。

今、企業は、くだらない広告などに予算を注ぎ込むのではなく、消費者のクレームというミサイル攻撃から身を守るための情報戦のために活用すべきなのだ。それが戦略的かつ実践的CRMというものであろう。

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2007年6月10日日曜日

vol.30 だからCRMは無理なんだ 2000/10/23

私の携帯電話が突然切れた。
この後、「お客さまのご都合により・・・」というアナウンスが勝手に流される。
決して私の都合で切ったわけではない。要らぬお節介である。
私は、すぐに携帯会社に電話をしてなぜ切ったのかを問いつめる。

「切る前に切ると言ってくれなければ困るじゃないですか、どうして勝手にプチンと切るんですか」
「いいえ、勝手にプチンと切ったりはいたしません。料金が未払いになっておりまして」
「じゃー、請求書を送ってください」
「お送りしてあるはずですが」
「いいえ、着いてないからこうして電話してるんです」
「戻ってきてないということは、着いているという判断をさせていただいております」
「だから、着いてないから電話してるんです」
「いいえ、着いているはずです。なくされたんじゃありませんか」
「あなたは送ったという、わたしは受け取ってないという、じゃー、郵政相に確認してみてください」
「いちいち配達確認はしないことになっております」
「じゃー、どうして送ったと断言できるんですか」
「ですから戻ってきてませんから、着いたということです」
「じゃー、着いたということにしましょう。でも、わたしの手許にはない」
「多分それはお客さまが紛失されたのだとおもいますが」
「じゃー、紛失したということにしましょう。でも、請求書がないと払えないでしょ。送って下さい」
「2度はお送りできないことになっております」
「じゃー、どうするんですか」
「直接当社までお振込いただくことになっております」
「それを先に言ってくれればいいんです。じゃー、振込先をファックスしてください。ついでに解約書も」
「ご解約はお電話ではお受けしておりません。また、料金をお払い頂いてからでないとできません」
「だから、払いたいと最初から言ってるんですがね、即解約したいんですが」
「ご解約はお近くの営業所までお越しになってお願いいたします」
「解約書、間違いなく送っといてくださいね!」

5分程のauの女子社員とのやり取りだったが、料金を速やかに払いたかっただけのわたしは、解約宣言をするに至った。
彼女の言動を振り返って見ると、一度も自らの落ち度を認めた形跡がないことが良く分かる。意味も無く謝ったりすることを潔しとしないのが女性の特質である。それをお客との接点の最前線に配置して平気な顔をしているというのが殆どの企業である。彼女は、解約宣言に対しても「事務的」に応じるであろう。

CRMが喧伝されて久しいが、問い合わせ窓口は「受付嬢」とは違うのである。海千山千の熟練の営業マンこそが相応しいのではないか、という感を今さらながら強くする事件であった。
こういう事情で、わたしの携帯は「お客さまの都合により現在通話できない」状況にある。払うべきか、解約すべきか、悩みはつきない。

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2007年6月3日日曜日

vol.29 応援しますeveryD.com 2000/10/18

あの大前研一氏がweb siteを立ち上げた。everyD.comというスーパーマーケットである。

宅配会社と提携、web上で購入した商品を夕方までに届けてくれるという、いわば、「御用聞き」サイトである。

大前氏はこのサイトを立ち上げるに当たって、主婦600人の購買行動を徹底モニター、「ネットで主婦に買い物をさせるのは不可能」という結論に至った。

ここであきらめるのが常人なのだが、彼は、この障壁を一つ一つ具体的に解決。11月1日には東京と福岡でスタートするところまで漕ぎ着けた。

キーボードアレルギーに対してはAMI VOICEという現在売り出し中の音声認識エンジンを採用、主婦特有の「ランダム発想」に応えた。また、ネット料金は3000円までとするニーズに対しては、OCNのアプティバセットの2980円で解決。さらに、ネットアクセス拒否層を拾うためにカタログを併用。記入の手間やファックスの手間を省くために、カタログに印刷されたバーコードをなぞるだけで購入完了を実現するマイクロバーコードリーダーを採用した。

さて、この「御用聞き」サイトの目的は何か?「買い物の手間を省く」ということなのだろうか?
主婦は値段だけにしか興味がないということなのだろうか?また、それで節約できた1時間程度の時間で何が実現できるのだろうか?

料理人というのは市場でその日の食材を見てその日の品書きを決める、といわれるように食材を目視確認することはもっとも重要なことであり、そこでいい食材を手に入れることができれば50%以上の仕事は終わったも同然だという。

日用品の場合はこの限りではないとは思うが、このビジネスモデル、主婦に提供されるベネフィットがもう一つ見えてこない。むしろ、主婦ではない独居OL(この場合は会社に配送)、独居老人の方にニーズがあるのかも知れないが、実際は食材よりも半調理品、半調理品よりも調理品の方にニーズは向いているのが実情である。

こうして考えてみると、このサイトの先行きは明るいとは言えないのだが、そもそもコンサルタントが実業を行って成功した試しはないので、わたしとしては楽しみに成りゆきを見守りたいと思う。

ところで、音声認識エンジンを供給しているAMI VOICEの担当はわたしの知人なのだが、大前氏からコンサル料を取っているいるそうで、「坊主からお布施を貰うような所業」にベンチャーの逞しさを痛感したものである。

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2007年5月27日日曜日

vol.28 今C2Cが面白い 2000/10/24

ナップスター論争に端を発したCustomer to Customer SITEがだんだん面白くなってきた。

WEB上のサイトに自分の持っているCDをアップロードし、その代わりに自分の聴きたい曲をダウンロードできるということから、学生を中心に人気沸騰。ついにアメリカレコード協会がナップスターを告訴、現在係争中である。

ナップスターはMP3という音楽モニターソフトによってWEBから楽曲をダウンロードしてくるわけだが、さらに、この先を行くソフトがグヌーテラである。

グヌーテラというソフトをダウンロードしてPCに取り込んでおくと、自分の聴きたい楽曲をそのソフトが探すべくPC同士の通信を開始。自動的に相手のPCからダウンロードしてしまうというソフトである。

このソフトはたった3時間だけWEB上で公開されたが、これをダウンロードしたごくごく少数の人々を通じて全米に配付されるにいたった。

こうなると「音楽著作権」で守られるべきアーティストの利益はいかなることになるのか、はたまた、そのサイトはいかなるビジネスモデルになるのか、ということを考えてしまうのがあさましい俗人の性。

しかし、このソフトの開発者は、そんな心配など歯牙にもかける様子もない。著作権などというものを否定し、いい楽曲は心あるスポンサーによって守られるべきであると、ルネサンスの頃のメディチ家のようなことをのたまう。

我が国のインターネットがB2BやB2Cのようなビジネスサイトに偏向していく中で、こういったインターネット草創期の頃の発想が堂々とまかり通っていることにネット文化を生み出した国と、ご都合主義で輸入した国との差をまざまざと見る思いがする。

C2BですらB側に取り込まれ、C2B2Cという合理主義に変質しようとしている我が国のネット環境にあって、ベンチャースピリットの介在する余地はないのかも知れない。

と、思っていたら、先日突然e-mailが送りつけられてきた。いわく、「WEBにあなたの小説を掲載してください」。わたしは自分の小説をWEBに載せて、WEB WRITER宣言を3年前にして以来、WEBで小説を発表してきた。

ところが、このサイトでは「小説をpdfでダウンロードして読め、気に入れば購入予約し、それが100人になったら出版する」というのだ。

この発想は、わたしの友人がやっているCD出版サイトと同じ発想なのだが、WEBを出版という超アナログな行為の「ツール」にしようというところが実に面白い。WEBはそれですべてが完結するわけではなく、「何かをするためのツール」であることを再確認させられる出来事であり、一条の光明を感じさせる出来事であった。

早速、「夢のある小説」を1本アップしたことは言うまでもない。
「ドリームブッククラブ」→ http://www.dreambookclub.com/

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2007年5月19日土曜日

vol.27 日本企業とCRM 2000/10/02

雪印乳業、日本ネスレと業務提携。思えばあっという間の出来事であった。

株主総会中に大阪で食中毒が発生してからたったの3ヶ月。すべて後手後手に廻った対応は社長交代では歯止めが効かず、軽く見積もっていた損失額も前期利益の全てに及び、今期の赤字は確実であるばかりでなくその数字の落ち着く先も見えない有り様である。生活者の、また流通業界の信頼回復への道のりは遠い。

しかし、今回の事件は、独り雪印のみの問題ではなく、日本の企業の持つ特質が白日の元に曝されたと考えるべきであろう。

業界トップ企業の奢り、消費者無視の体質、特殊な業界の体質、などとあげつらっていうのは容易い。しかも、業界の特殊性にすべてをなすりつけてしまいがちである。ならば、三菱自動車の例はどういうことなのか、さらに、東芝事件はどうなのか。これら日本企業の持つ全く同根の病に今回の事件の元凶があるのではないか?

すなわち、「知らしむべからず、寄らしむべし」という支配者の精神構造であり、日本政府における高級官僚達の発想に通じるものである。

ディスクロージャーだインタラクションだと騒いでいる割には、情報の開示も対話も存在しなかったことが「問題」なのではないのか。

CRM(Customer Relationship Manegement)ばやりの昨今だが、この2つを抛擲して一体どんな関係性を構築しようというのか。

恰好だけのCRMはあり得ない。走り出したら止まることは出来ない。「情報開示」にのっとったコミュニケーションには程々ということはない。CRMを標榜する以上、生活者や関係者との徹底したコミュニケーションをシジフォスの神話のように繰り返す心構えで実践することなしには、失った信頼を取り戻すことはできないだけでなく、そのレーゾンデートルすら脅かされることになるのではないだろうか。

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2007年5月13日日曜日

vol.26 パーミッションマーケティングと日本人 2000/09/21

最近とみに思うことがある。「日本人にはパーミッションマーケティングは向いていないんじゃないか?」ということである。

我が国でpermit=許可を与えることに慣れているのは、許認可で飯を食っている役人くらいなもので、permitを受ける立場にはあっても与える立場に立ったことがないというのが大方の我が国の国民である。

こういった実情を無視するかのように、ネット上でパーミッションマーケティングがもてはやされている。しかしその実態はトラッキングエンジンによる、生活者の属性に基づいたデータ配信である。

アメリカのコンテンツを見ていると、やたら選択を迫る仕掛けが施されているものが目に着く。選択といってもクリックしてマーキングするだけの手間いらずであるから、permissionを与えたという認識もないのだが、これがいきなりofferに変わるわけだ。

offerというのは、「申し出る」ということで、いわば「言質を取られた状態」になるわけで、「offerに基づいていろいろなものが配信されてもあなたのせいですよ」という正当な言い訳を相手に与えることを意味する。

これが実は大変微妙な点である。膨大な配信データを前にして、「いいよ」とは言ったけど、「そうしてくれ」と言った覚えはない。という深い感慨をいだくことになること請け合いであるからである。

YES,NOだけでコミュニケーションを行う国民と、腹芸でコミュニケーションする国民とのカルチャーギャップというのはいかんともしがたい。

「程度ものってことがあるだろう!」てなことも全く通用しない。YESと言った以上、そのpermissionに基づいて山のようなデータが送られてきたとしても文句は言えないのである。しかも、配信停止するにはWEBのページにアクセスして自分で「禍根を断つ」必要があるのである。ふーっ。(これは結婚と離婚の問題に酷似している、ような、気がする。もしくは「注意1秒怪我一生」という交通標語を彷佛とさせる)

ふと初めてアメリカに行った時、サンドイッチの注文に手間取ったことを思い出した。white or brown?から始まった質問攻めをこなし、「さっさと持ってこいよ」という気持ちを押さえながら、いざ運ばれてきたものを見て愕然としたときの思い・・・・に似ている。

しかし、ネットとはそういう国民の生み出した文化なのである。ということを重々心に留め置いて望まなければならないのだろう、と「以心伝心」の国の国民として思う今日この頃である。

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