2007年3月18日日曜日

vol. 15 酒造メーカーのIT革命 2000/06/11


ワインや洋酒などのネット販売は活況を呈しているにもかかわらず、清酒の方はさっぱりである。とりわけナショナルブランドの清酒のネット販売は低迷している。

この理由は実に単純で、販売店の存在にある。免許制度で守られてきた4万軒の酒販店に対して一律に商品を供給してきた歴史的経緯が、ネットによる中抜き販売を疎外しているわけである。
さらに酒税を管轄する国税庁との癒着も見逃せない。生産石高に対する課税は前納制で、払った税金分の商品を生産するなどという業界は酒造メーカー位なものだろう。
これを実現したのが最新の醸造法で、「安定した品質」の清酒を通年「安定供給」することが出来るようになったことが、「安定した税収」を確保することを保証しているのである。いわば酒造メーカーとは税金回収マシーンなのである。

ここまでは許そう。安定した品質の清酒が通年飲めるのなら、上戸としては歓迎すべきことであるからである。しかし、問題はある。あるどころか、とんでもない大問題があるのである。
当然ながら、清酒は米から造られる。米は秋に収穫される。従って、これを仕込み、酒が出来るのは翌年の秋である。年に1度のお祭りであるボージョレ・ヌーボーというワインの解禁日は、11月の第4木曜日と決まっていることからも納得できる。

ところが清酒には解禁日がない。なぜなら、年4回の仕込みが行われているからである。これが「安定供給」の意味である。「安定品質」については戦時中の米不足時に製造された「三増酒(米から造ったアルコール=清酒を醸造アルコールで三倍に薄めたもの)」が普通酒などと呼ばれて堂々と現在も酒販店に並んでいるのを見れば分かる。

フランスワインのAOC規定では、ブドウ以外のもので造られたアルコールが混ざった酒はワインとは呼べないことになっているから、ナショナルメーカーと国税庁が造る清酒は「清酒ではない=リキュール類に分類される」ということになり、醸造酒として輸出されることはない。

ネットというのは情報公開が付き物であるが、こういった実態を酒造メーカーもこの際公表し、国民的議論を行うべきだろう。数少ない誠意ある造り酒屋が造った純米酒・吟醸酒ブームの尻馬に乗ってのこのこ出て来てお茶を濁すべきではない。
戦中から現在に至るまでの過ちを認め、清酒メーカーとは食品メーカーであるという原点に立ち戻って、国税庁の安定税収ではなく生活者の健康に寄与する企業使命を果たしてほしいものである。それが乗り遅れたIT革命で達成すべき目標である。


ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年3月17日土曜日

vol.14 情報家電の行方 2000/06/06

「ただいま!」
「おかえりなさい!お風呂はわいています。お食事はお済みですか?明かりはどうしましょう?」
「済ませてきた。明かりはこれでいい。何かメッセージはあるかな」
「メイルが届いています」
「読んでくれ。その後、録画してある映画を」
「お風呂はどうしますか?」
「入るよ、保温しておいてくれ」

これは新婚家庭の会話ではない。彼が話しているのはHS(ホームセクレタリー)-1の「深水藍」である。もともと「彼女」はゲームソフトのアイドルだったのだが、最近独身男性のホームセクレタリーとしても人気上昇中なのだ・・・・。

情報家電という言葉を聞くようになって久しいが、一向に使い物になる商品が登場しない。これは各家電メーカーの「縦割り行政」と全く同じ生産体制に原因がある。

ネットに繋がるテレビや冷蔵庫や電子レンジなどというものが続々と発売されるが、こんなものは全く不要である。いちいちこんなものを操作している時間が無駄だし、冷蔵庫の中身など見た方が早いし、レシピを教えてもらったところで料理など作ったことのない人間にはブタに真珠なのだ。

情報家電の発想に最も欠けているものは、「コントロールセンター機能」を何に持たせるかということである。つまり、「家電のネットワーク化」をまず考えることである。これを抜きにして、単発的にご都合主義でネットワークの単なる「パーツ家電」などいくら作ってみたところで生活者の評価を下げるばかりである。

画面に写し出された3DCGキャラに音声認識エンジンを搭載した対話型ロボット(女性客の場合は金城武とかになるんでしょうか)が家庭内の家電をコントロールしナビゲーションする。まずこういうふうに考えなければダメ。

これが決まればホームサーバーが必要にもなるだろうし、各家電を無線で結ぶネットワークを構築する必要も出てくるわけである。

家電メーカーというのは発想が転倒しているのだから、逆立ちでもして考えたら少しはマシなものが出てくるんじゃないだろうか。出来ませんかね、こんな簡単なことが、家電メーカーさん。


ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年3月10日土曜日

vol.13 e-建設省の陰謀 2000/06/04

何と下水道なのである。光ファイバーを下水道から検針器を通って各家庭へ引っ張ってくるというのである。これはまた何ともドラスティックな構想が出てきたものである。

NTTの管理する光ファイバーの幹線はすでに敷設が完了しているのだが、各家庭までどうやって引き込むのかというのが問題として残されたままになっている。

ところが、これには10兆円規模の予算が必要で、もしも個人で幹線から家庭までの引き込み工事を「下水道工事」のように行うと10万円ほどかかるそうである。

こうした理由から、光ファイバー網構想自体が暗礁に乗り上げていたわけで、NTTとしては、ISDNや今月から始まったADSLでお茶を濁していたわけである。またこの間に、本来の目的とは違うにもかかわらず、有線放送の同軸ケーブルの活用が注目されてきた矢先の構想発表である。

勿論、こういった構想が発表されるというのは、ネットインフラが未整備であることに加えて、いわゆる「縦割り行政」のなせるわざであり、役割分担などお構い無しにリーダーシップを取りに走るみっともない様に見えなくはない。また当然、これまでの流れからして、郵政省、運輸省などからの反発もあるだろう。

しかし、我が国の通信インフラを考えるならば、やり方はどうであれ、光ファイバー網が全国津々浦々にまで敷設されるという世界一の先進的総合通信インフラが実現することが望ましい。

現在検討されている音楽や映像や動画などのネット配信もこれによって一気に加速することになると同時に、アメリカに比べて5年は遅れているといわれるネットインフラも一挙に最先端に躍り出ることになる。

是非ともここは省庁間の垣根を越えて、国を挙げて21世紀のインフラづくりに取り組んでもらいたいものである。

選挙の後のお楽しみですがね。


ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年2月28日水曜日

vol.12 音楽配信大戦争 2000/05/28

三つ巴の闘いという様相を呈してきた感がある音楽配信である。

国内で最初に言い出したのはソニー(SME)だったと思うが、その後を追うようにして松下、東芝が参入を表明。更にNTTに第2電々、と続々と参入を表明するに至って、まさに百家騒鳴状態にある。
音楽配信というのは、デジタル化された音源を、われわれユーザーが、配信会社のサーバーから何らかの端末にダウンロードし、再生することによって実現する。

つまり、ラジオならチューナーに触るだけで色々な音楽を只で聞くことができるが、音楽配信の場合は、好みの音楽を有料で(1曲100円~300円程度)ダウンロードし、さらに再生する必要がある。たとえば、最近の標準圧縮技術であるMP3でパソコンにダウンロードする場合、3分程度の楽曲でもISDNで10分程度かかる(ADSLが実現すれば1分程度になりやっと現実的な話になる)。次世代の端末として目される携帯、PHSでダウンロードしても5分程度がかかる。

ただですら面倒臭そうなのに、これにメーカー各社の配信技術の違いによって現在、ソニー、松下・東芝、三洋・日立の3陣営に別れてしのぎを削っているのである。この闘いはまたダウンロードしたデジタル音源=音楽データをため込むためのメモリーチップ戦争でもあり、メモリースティック対メモリーカード対フラッシュメモリーの闘いでもあって、かつて繰り広げられたVTR戦争、β対VHSの闘いよりも熾烈さを増している。

こうして音楽配信を取り巻く環境は整いつつあるようなのだが、肝心のコンテンツはというとレコード会社に依存することになるそうで、レコード会社は、CDで売るのをパッケージ販売というのに対し「ノンパッケージ」販売と呼んでいる。

さて、配信規格もメモリーも価格も一定に統一されたとして、このドッグイヤーの時代にあって、CDより早く、安く、自分の聴きたい音楽が聴けるということに一体いかほどの付加価値が見出せるのだろうか、ということについて論じられたものはまだないというのがいつもながら気がかりなところである。


ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年2月27日火曜日

vol.11 ビットバレーデビュー 2000/05/18

50からは東京だ!東京行くならe-bizだ!こう思い立ったのが3月。6月27日、わたしは51才になるので、残された期限は3ヶ月だった・・・・。

4月:事務所住所決定、名刺作成、リクルート開始。5月:仕事探し、仕事決定。6月:住居決定、上京。ホップ、ステップ、ジャンプでいってみよう!という乱暴なプランで動き始めて1ヶ月半、上京3度目にして1つ仕事が見つかった。(ご協力頂いた皆様、本当にありがとうございます!)
渋谷、いわゆるビットバレーでのデビューは6月24日(土)、51才の誕生日の3日前になる。滑り込みセーフ!である。内容は、e-marketingの講師。本当は、現役でe-コンサルの仕事をと思っているのだが、担当の方からは「若きe-exectiveを養成していただきたい」という現役リタイア宣告書を突き付けられた。

もっとも20代、30代が目白押しのこの業界にあって、50でデビューというのも遅きに失したのもいいところではあるが、ネットやECやe-bizなんてわたしの若い頃には存在しなかったのだから仕方がない。

しかし、講師と言うのも考えようによっては悪くないわけで、「学ぼうと思えば教えよ」ということわざ(そんなのあるのか?)通り、知識を身につける最短距離である。かくなる上は、若者のエネルギーを吸収して楽していいとこ取りしてやろう、と目論んでいる。

だれにでも20代、30代はあったわけだし、それぞれの世代がいかに汗顔ものであったかは記憶に新しい。しかも、それがe-bizだからといってビジネスの根幹が変わるわけではない。手段は変わるが目的は変わらないのである。(そう思わなければやってられないだけだが)

実際、最近のマーケティング自体、マーケターの夢を実現するようなマーケティング手法が台頭してきて、隔世の感を抱く前に、「便利になったなー!」という感慨の方が先に立つ。

こんな未曾有のチャンスをガキ共に独占させておく手はないのである。このチャンスに昔取った杵柄と老練さをぶち込んで、時流に乗ってみようと思うのである。


ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年2月21日水曜日

vol.10 100兆円とCRM 2000/05/11

100兆円なのだそうである。今年から来年にかけての郵便貯金の定期預金の満期払い戻し金の合計額がである。

これを巡って国内外の銀行、証券、VC入り乱れての争奪戦が繰り広げられているそうである。額が額なので全くピンと来ませんがね。

その第1回目の払い戻しが先日行われたわけだが、この争奪戦は、圧倒的な郵便局の優勢を見せつけ、何と60%が「再回収」されたそうである。つまり、残りの40%が巷へと「流出」したということになるわけである。しかも、それは国内に留まることなく殆どがアメリカに向かったというのが大方の見方である。

ところで、最近のマーケティングでは、CRM(Customer Relationship Management)という手法が注目されている。これは、従来の「大衆」を対象にしたマスマーケティング手法ではなく、「個人1人1人」を対象にした、いわゆる1to1マーケティングの究極の姿であり、消費者1人1人のニーズをmining(掘り起こす)することによって適材適所的販売を行おうというものである。

こういう考え方からすると、また消費者というものがそういうものであるのならば、100兆円という金には十人十色の遣い道があってもよさそうなものであるが、どうやらこれらのお金持ちというのはお上に献上金を差し出すのと同じことをするもののようである。もしくは、お金持ちというのは消費者ではないということなのだろう。

さて、ここに面白い符合がある。100兆円の40%に当たる40兆円と銀行の不良債券額は同一であるという符合である。郵便貯金というのは国庫金、先の銀行への「公的資金」というのも国庫金。また国民不在の妙な引き算が起こらないことを祈るばかりである。

ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ

2007年2月19日月曜日

vol.9 ジャパニーズスタンダード 2000/05/05

インターネットのデータ通信方式としてADSLが急浮上してきた。
これは郵政省が、アメリカのネット接続料値下げ要求を受けて、昨年から実験していた新方式を繰り上げ導入することにしたのではないかと思われる。

ADSL(アシンクロナス・デジタル・サブスクライバー・ライン=非対称デジタル加入者線)は、通常の電話回線を使用するにもかかわらず、640Kbpsを実現する新技術である。つまり、現在のISDNの10倍のスピードでの通信が可能なのである。

そんな技術があるのなら、どうしてさっさと導入しないんだ!という消費者の気持ちなどお構い無しに事を運ぶのが官庁というわけだから仕方がないにしても、やっと6月にISDNの定額制がスタートするというのに、ADSLもほぼ同時に導入すると郵政省はいう。

こうなると戦略も何もあったものではないのだが、すでに尻に火がついているということなのだろう。こういう見境のない決断をするところも、官僚というのがいかにご都合主義の連中たちかというのが良く分かる。

ADSLは電話交換機を通さないで運用される。さらにダウンが640Kbps、アップが200Kbpsという非対称の実効スピードで運営される。実は、ADSLというのは「電話交換機を通さない」というところにハイスピード実現のポイントがあり、NTTによる回線の独占を放棄させることで実現した技術なのである。

しかし、次世代通信インフラに1Mbps以上の通信速度が要求されていることを考えると、これもまたその場しのぎでしかないことは見え見え。光ファイバーを各家庭に引き込むというのが抜本的解決策であることは分かり切っているのだから、ここはすべてのODAを中止してでも取り組まなければならない国家インフラであるはずなのだが。

ソウダヒロシ プロフィール CONTACT

※直近のブログは→ITトレンド2010

※食い物系のブログは→今日のメニュー2010

※環境系のブログは→環境トレンド2010

※進行中プロジェクトのブログは→リンクアド・プロジェクト公式ブログ