ワインや洋酒などのネット販売は活況を呈しているにもかかわらず、清酒の方はさっぱりである。とりわけナショナルブランドの清酒のネット販売は低迷している。
この理由は実に単純で、販売店の存在にある。免許制度で守られてきた4万軒の酒販店に対して一律に商品を供給してきた歴史的経緯が、ネットによる中抜き販売を疎外しているわけである。
さらに酒税を管轄する国税庁との癒着も見逃せない。生産石高に対する課税は前納制で、払った税金分の商品を生産するなどという業界は酒造メーカー位なものだろう。
これを実現したのが最新の醸造法で、「安定した品質」の清酒を通年「安定供給」することが出来るようになったことが、「安定した税収」を確保することを保証しているのである。いわば酒造メーカーとは税金回収マシーンなのである。
ここまでは許そう。安定した品質の清酒が通年飲めるのなら、上戸としては歓迎すべきことであるからである。しかし、問題はある。あるどころか、とんでもない大問題があるのである。
当然ながら、清酒は米から造られる。米は秋に収穫される。従って、これを仕込み、酒が出来るのは翌年の秋である。年に1度のお祭りであるボージョレ・ヌーボーというワインの解禁日は、11月の第4木曜日と決まっていることからも納得できる。
ところが清酒には解禁日がない。なぜなら、年4回の仕込みが行われているからである。これが「安定供給」の意味である。「安定品質」については戦時中の米不足時に製造された「三増酒(米から造ったアルコール=清酒を醸造アルコールで三倍に薄めたもの)」が普通酒などと呼ばれて堂々と現在も酒販店に並んでいるのを見れば分かる。
フランスワインのAOC規定では、ブドウ以外のもので造られたアルコールが混ざった酒はワインとは呼べないことになっているから、ナショナルメーカーと国税庁が造る清酒は「清酒ではない=リキュール類に分類される」ということになり、醸造酒として輸出されることはない。
ネットというのは情報公開が付き物であるが、こういった実態を酒造メーカーもこの際公表し、国民的議論を行うべきだろう。数少ない誠意ある造り酒屋が造った純米酒・吟醸酒ブームの尻馬に乗ってのこのこ出て来てお茶を濁すべきではない。
戦中から現在に至るまでの過ちを認め、清酒メーカーとは食品メーカーであるという原点に立ち戻って、国税庁の安定税収ではなく生活者の健康に寄与する企業使命を果たしてほしいものである。それが乗り遅れたIT革命で達成すべき目標である。
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