2007年3月31日土曜日

vol.17 ビジネスモデル特許 2000/06/20

e-bizのやり方そのものを特許で保護しようという動きが激しくなってきた。

先日(6/14~16)、霞ヶ関で開かれた「三極特許庁専門家会合」に集まった日米欧の三極特許政策担当者によって確認された事項は、
1)特許としての適格性を持つには「技術的価値」が要求される
2)通常の自動化技術を用いて人間が行っている公知の業務方法を単に自動化しただけでは特許性がない
という2点である。

さらに、ヒトゲノム遺伝子の解析では、単に配列情報だけではなく、その機能性について明確化されなければ特許にはならないことでも合意した。

と、まー有り体に言って、これは世界の急速な動きについて行けなくなった日本の特許庁がネット先進国の担当者を招待してお勉強会をしたようなものだが、これによって、ビジネスモデル特許出願の基準を示唆することになったわけで、一定の成果はあったと評価すべきだろう。

特許というのは各業界によって認識がまちまちであり、国によってもはなはだしい違いを見せる。現状、先行している業界やメーカーは、特許自体が「早い者勝ち」によって認定されることから「駄目もと」や「取りあえず」で特許出願してきたわけだが、こういった指標が示されることによってそのような動きも緩和されることになるに違いない。

この会議と前後して松下電工がビジネスモデルの社内公募を発表、最高1000万円の報奨金を支給すると発表した。以前にも社内からアイデアを募るといった動きはあったが、金一封で済ませたり、せいぜい100万円止まりの報奨金支給でお茶を濁してきたわけだが、やっと「アイデアに金を払う」という企業姿勢が見られるようになってきたということができよう。

最近、メーカーが消費者からアイデアを募りそれを商品化する動きがあいついでいるが、このようなアイデアを「只取り」することなく、売り上げの歩合でバックするような制度も同時に導入してほしいものである。

これからは、ビジネスモデルを予め取得しておいて企業に売り込んでくる消費者や社員というのが続々出てくることが予想される。今回の松下電工の動きは、社内の活性化と退職者対策が目的には違いないだろうが、穿った見方をすれば、それらの「囲い込み」と「早期予防」という側面がないとは言えまい。
それにしても、1000万というのは高いのか安いのか?それが問題だ。

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2007年3月25日日曜日

vol.16 MUTTSと出版業界 2000/06/19


マガジンハウスから創刊されたMUTTSという雑誌が面白い。
もともとこの雑誌社は「サイコグラフィック・データ・マーケティング(心理的属性に基づくマーケティング)」、デモグラフィック・データ・マーケティング(年令・所得などの社会的階級に基づいたマーケティング)など従来のマーケティング・メソッドを駆使して人気雑誌を出版してきた会社である。(POPEYE,BRUTUS,OLIVE,HANAKOなど)

そして、そこには人気雑誌=人気編集長の存在、という構図があって、この構図=モノづくりの方程式、であったわけで、この方程式はあらゆるモノづくりにも当てはまるわけである。

ある人間の存在がその雑誌や商品の完成度や感性度までも決定してしまう力を持っているわけで、それは、今でいうところの「カリスマ編集長」や「カリスマ企画者」というような存在であるわけである。

ところが、これを真っ向から否定してかかったのがMUTTSという雑誌の編集方針なのである。
読者はまずネットにアクセスして、好みのBBSやチャットに入り、自分の興味のあることを書き込んだりくっちゃべったりする。すると、それが印刷されてMUTTSに掲載されるのである。おいおい、それって雑誌かよ~~!っと言うなかれ、雑誌なのである。

さーて、これを認めるということは、「消費者の声を商品に反映する」ことを標榜してきた雑誌社やメーカーというのはどうなってしまうのだろう?という疑問がわく。でしょ?でも、わくあなたというのは前世紀の遺物。

この雑誌は「消費者の声を商品にしている」わけだから、既存の価値観で判断できないわけである。もし既存の価値観で判断してしまうと「編集者不在の雑誌」というレッテルを貼って無視するしかない代物ということになる。

ところが、ここがこの雑誌社の面白いところで、「情報収集能力にプロもアマもない」と割り切った。ただし、編集方針というのはあるわけで、「かじ取りに徹する」という方針によってそれを実現していこうというわけである。

この辺りにIT革命のキーワードがあると思うのだが、「立場を全うしたい前世紀の編集者」たちがのさばる出版業界に理解できるかどうか・・・・。
ちょっとわくわくしながら見守っていきたい雑誌だと思うのだが。


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2007年3月18日日曜日

vol. 15 酒造メーカーのIT革命 2000/06/11


ワインや洋酒などのネット販売は活況を呈しているにもかかわらず、清酒の方はさっぱりである。とりわけナショナルブランドの清酒のネット販売は低迷している。

この理由は実に単純で、販売店の存在にある。免許制度で守られてきた4万軒の酒販店に対して一律に商品を供給してきた歴史的経緯が、ネットによる中抜き販売を疎外しているわけである。
さらに酒税を管轄する国税庁との癒着も見逃せない。生産石高に対する課税は前納制で、払った税金分の商品を生産するなどという業界は酒造メーカー位なものだろう。
これを実現したのが最新の醸造法で、「安定した品質」の清酒を通年「安定供給」することが出来るようになったことが、「安定した税収」を確保することを保証しているのである。いわば酒造メーカーとは税金回収マシーンなのである。

ここまでは許そう。安定した品質の清酒が通年飲めるのなら、上戸としては歓迎すべきことであるからである。しかし、問題はある。あるどころか、とんでもない大問題があるのである。
当然ながら、清酒は米から造られる。米は秋に収穫される。従って、これを仕込み、酒が出来るのは翌年の秋である。年に1度のお祭りであるボージョレ・ヌーボーというワインの解禁日は、11月の第4木曜日と決まっていることからも納得できる。

ところが清酒には解禁日がない。なぜなら、年4回の仕込みが行われているからである。これが「安定供給」の意味である。「安定品質」については戦時中の米不足時に製造された「三増酒(米から造ったアルコール=清酒を醸造アルコールで三倍に薄めたもの)」が普通酒などと呼ばれて堂々と現在も酒販店に並んでいるのを見れば分かる。

フランスワインのAOC規定では、ブドウ以外のもので造られたアルコールが混ざった酒はワインとは呼べないことになっているから、ナショナルメーカーと国税庁が造る清酒は「清酒ではない=リキュール類に分類される」ということになり、醸造酒として輸出されることはない。

ネットというのは情報公開が付き物であるが、こういった実態を酒造メーカーもこの際公表し、国民的議論を行うべきだろう。数少ない誠意ある造り酒屋が造った純米酒・吟醸酒ブームの尻馬に乗ってのこのこ出て来てお茶を濁すべきではない。
戦中から現在に至るまでの過ちを認め、清酒メーカーとは食品メーカーであるという原点に立ち戻って、国税庁の安定税収ではなく生活者の健康に寄与する企業使命を果たしてほしいものである。それが乗り遅れたIT革命で達成すべき目標である。


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2007年3月17日土曜日

vol.14 情報家電の行方 2000/06/06

「ただいま!」
「おかえりなさい!お風呂はわいています。お食事はお済みですか?明かりはどうしましょう?」
「済ませてきた。明かりはこれでいい。何かメッセージはあるかな」
「メイルが届いています」
「読んでくれ。その後、録画してある映画を」
「お風呂はどうしますか?」
「入るよ、保温しておいてくれ」

これは新婚家庭の会話ではない。彼が話しているのはHS(ホームセクレタリー)-1の「深水藍」である。もともと「彼女」はゲームソフトのアイドルだったのだが、最近独身男性のホームセクレタリーとしても人気上昇中なのだ・・・・。

情報家電という言葉を聞くようになって久しいが、一向に使い物になる商品が登場しない。これは各家電メーカーの「縦割り行政」と全く同じ生産体制に原因がある。

ネットに繋がるテレビや冷蔵庫や電子レンジなどというものが続々と発売されるが、こんなものは全く不要である。いちいちこんなものを操作している時間が無駄だし、冷蔵庫の中身など見た方が早いし、レシピを教えてもらったところで料理など作ったことのない人間にはブタに真珠なのだ。

情報家電の発想に最も欠けているものは、「コントロールセンター機能」を何に持たせるかということである。つまり、「家電のネットワーク化」をまず考えることである。これを抜きにして、単発的にご都合主義でネットワークの単なる「パーツ家電」などいくら作ってみたところで生活者の評価を下げるばかりである。

画面に写し出された3DCGキャラに音声認識エンジンを搭載した対話型ロボット(女性客の場合は金城武とかになるんでしょうか)が家庭内の家電をコントロールしナビゲーションする。まずこういうふうに考えなければダメ。

これが決まればホームサーバーが必要にもなるだろうし、各家電を無線で結ぶネットワークを構築する必要も出てくるわけである。

家電メーカーというのは発想が転倒しているのだから、逆立ちでもして考えたら少しはマシなものが出てくるんじゃないだろうか。出来ませんかね、こんな簡単なことが、家電メーカーさん。


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2007年3月10日土曜日

vol.13 e-建設省の陰謀 2000/06/04

何と下水道なのである。光ファイバーを下水道から検針器を通って各家庭へ引っ張ってくるというのである。これはまた何ともドラスティックな構想が出てきたものである。

NTTの管理する光ファイバーの幹線はすでに敷設が完了しているのだが、各家庭までどうやって引き込むのかというのが問題として残されたままになっている。

ところが、これには10兆円規模の予算が必要で、もしも個人で幹線から家庭までの引き込み工事を「下水道工事」のように行うと10万円ほどかかるそうである。

こうした理由から、光ファイバー網構想自体が暗礁に乗り上げていたわけで、NTTとしては、ISDNや今月から始まったADSLでお茶を濁していたわけである。またこの間に、本来の目的とは違うにもかかわらず、有線放送の同軸ケーブルの活用が注目されてきた矢先の構想発表である。

勿論、こういった構想が発表されるというのは、ネットインフラが未整備であることに加えて、いわゆる「縦割り行政」のなせるわざであり、役割分担などお構い無しにリーダーシップを取りに走るみっともない様に見えなくはない。また当然、これまでの流れからして、郵政省、運輸省などからの反発もあるだろう。

しかし、我が国の通信インフラを考えるならば、やり方はどうであれ、光ファイバー網が全国津々浦々にまで敷設されるという世界一の先進的総合通信インフラが実現することが望ましい。

現在検討されている音楽や映像や動画などのネット配信もこれによって一気に加速することになると同時に、アメリカに比べて5年は遅れているといわれるネットインフラも一挙に最先端に躍り出ることになる。

是非ともここは省庁間の垣根を越えて、国を挙げて21世紀のインフラづくりに取り組んでもらいたいものである。

選挙の後のお楽しみですがね。


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